診療科案内 呼吸器外科サブタイトル
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概 要

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呼吸器外科は、肺・気管支・縦隔(左右の肺の間、心臓と大血管は除きます)・胸壁・横隔膜に生じた疾患の手術治療を主に担当します。
呼吸器系疾患の外科治療は、従来は外科で対応しておりましたが、患者さんの増加と多様化するニーズに応えるために、2004年4月に新しく専門科として開設され、呼吸器外科専門医として坂本医師が着任いたしました。
開設初年度より周囲の医院・病院から多くの患者さんをご紹介いただき呼吸器外科手術症例が急増し、 2005年4月には常勤医師1名増員の運びとなりました。更に2007年4月には呼吸器外科専修医が1名加わり3名となりました.2010年4月には専修医が3年間の後期臨床研修を修了し常勤採用となり,常勤医3名となりました。また,当院は2005年に日本呼吸器内視鏡学会(気管支鏡)の認定施設、2006年に日本呼吸器外科学会の関連施設,2009年に日本呼吸器外科学会基幹施設に認定されました。
当科では気胸や肺癌手術などをはじめ多くの胸部手術に胸腔鏡(ビデオモニターシステム)を使用し、侵襲の少ない手術(身体に優しい手術)を心がけております。2010年4月の新病院開院に伴い,ハイビジョンモニターシステムを導入し,より鮮明な画像により一層安全な手術が行えるようになりました。また、呼吸器内科と共に呼吸器センターを設立し、呼吸器疾患においてより綿密な連携が取れるようになりました。


対象疾患

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主な対象疾患は、肺悪性疾患(肺がん、転移性肺腫瘍)、肺良性腫瘍、自然気胸、肺気腫、炎症性肺疾患、縦隔腫瘍(胸腺腫瘍、神経原性腫瘍など)、重症筋無力症の手術療法(胸腺全摘術)、膿胸、手掌多汗症、胸壁腫瘍、漏斗胸、胸膜疾患(胸膜中皮腫など)、横隔膜疾患、胸部外傷、気道内異物などです。
各疾患の詳しい治療法については下部のメニューからご覧ください

サブタイトル

●肺がんについて

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近年、喫煙や大気汚染などの影響により肺がんの増加は著しく、男性ではがん死亡原因のトップ、女性では2番目となっております。また、CT検査をする機会が増えたことで、たまたま肺がんが見つかることも増えてきております。腫瘍が小さい時期に発見(早期発見)し,切除することで充分に治癒が期待できます。一方、症状が出てきてから来院された場合には進行した状態で見つかることも多く、治療が難しいがんの一つでもあります。

どんな種類がありますか?
細胞の形から分類すると腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌の4つが主なものです。 腺癌の頻度は肺がんの約半数を占め、最も多くなっております。女性や非喫煙者に見つかる頻度が高くなっております。一方、扁平上皮癌は喫煙との関係が強く、男性に多いといわれています。この2種類が肺がんの大半を占めます。
小細胞癌は肺がん全体の約10%を占めますが、他の種類と比べて転移しやすい特徴があるため、治療方法は他の肺がんとやや異なり、抗がん剤治療を行う場合が多いです。
肺がんはできた部位から、中枢型と末梢型に分けられます。中枢型とは区域気管支より気管に近い部位にできた場合で(簡単にいうと、左右の肺の中心付近にできた場合)、末梢型とはそれよりも肺の端の方にできた場合を言います。
末梢型の場合はレントゲンに写りやすいので比較的発見しやすいですが、中枢型は小さいうちはレントゲンでは見つかりにくく、進行した状態で発見される事がしばしばあります。


どんな症状が出ますか?
癌が小さいうちは、多くの方でまったく症状はありません。長く咳や痰が続いたり、痰に血が混ざったりするような場合は癌を疑い検査をすることが大切です。胸に痛みがでたり、声が枯れたりすることもあります。進行するとひろがり方によりいろいろな症状が出現します。

どんな検査をするのですか?
胸部レントゲン、CTなどの画像診断で肺がんが疑われた場合は、PET検査(注射した薬剤が悪性部分に集まり全身の検査ができます)を行ったり、喀痰細胞診や気管支鏡検査、CTガイド下針生検などで腫瘍の細胞を採取したりして、癌かどうかを調べます。とれる細胞が少量なので癌であっても癌細胞が出ない場合もあり、画像診断で肺がんを疑う場合には手術を考えます。 当科では診断が付いていない場合には胸腔鏡(ビデオモニターシステム)を使用して小さな傷で検査(腫瘍の細胞や組織を採取する手術)を行うこともあります。この際に呼吸器疾患を専門とする病理医により迅速病理診断を行い、悪性と判断された場合にはそのまま通常の手術に移行します。
また手術中に癌のリンパ節や切除断端への拡がりの有無を病理医に確認してもらい、より患者さん個人に合った手術を心がけています。


どんな手術をするのですか?

当院では比較的早期の肺がんに対しては積極的に胸腔鏡下手術を行っています。手術の傷が小さく、術後の痛みも軽いのが特徴です。手術による体へのダメージが少ないため、回復も早く入院期間も従来の開胸手術(大きく切開する手術)と比べ短くなりました。 胸腔鏡下肺葉切除術における術後平均入院期間は1週間程度です。また進行肺がんに対しては、開胸手術を主に行っております。開胸手術におきましても、胸筋温存開胸(開胸する際に切る筋肉を少なくする方法)や肋骨再接合(開胸の際に一旦切った肋骨を再度つなげる方法)を用いて身体への負担を減らしております。また、皮膚の縫合は大きな切開であってもほとんどの傷で吸収系による埋没法で行い、医療用皮膚接着剤(ダーマボンド)を使用しているため、術後の消毒や抜糸の必要が無く、胸に入った管が抜ければシャワー浴も可能です。傷も従来の方法に比べて目立ちません。また,この方法により当科ではこれまでに創部の感染は起こしておりません.手術後に胸に入れる管(ドレーン)も2005年からは細くて柔らかいブレークドレーンを大部分の手術で使用しております。管(ドレーン)を抜いた部分の縫合が必要なく、まったく消毒・抜糸が不要となりました。
また、がんが周辺の臓器や胸壁などに直接浸潤しておりましても,切除可能と判断された場合には積極的に手術を行い、切除不能な場合でも放射線治療や抗がん剤治療により腫瘍を小さくしてから手術を行う方法(Induction therapy)も行っております。


ph5 完全胸腔鏡下手術(Complete VATS)とハイブリッド胸腔鏡手術(Hybrid VATS)の違いは?
日本でビデオモニターを用いた胸腔鏡が普及し始めた1992年頃から坂本部長は胸腔鏡手術に携わっておりました。当初はビデオモニター画像だけでなく小さな開胸創からの直視(直接術野を見ること)を併用したハイブリッド胸腔鏡手術(Hybrid VATS)も行っておりました。しかし、ビデオシステムや胸腔鏡手術用器具が進歩し,手術の技術も向上したため、更に手術創を小さくすることができるようになった事で直視が困難となり(むしろ直視の必要がなくなり)、徐々にハイブリッド胸腔鏡手術の割合は減少し、2003年頃からはほぼ全ての胸腔鏡下手術は完全胸腔鏡手術(Complete VATS)に移行しました。
そのため当院では開設時(2004年4月)から胸腔鏡下手術はほぼ全て完全胸腔鏡下(鏡視下)手術で行っております。

手術後の治療は?

胸腔ドレーンという管がつながった状態で病棟に戻ります。経過がよければ、この管は数日で抜きます。順調に行けば1週間程度で退院です。なにか合併症が起きた場合には入院が長くなることもあります。
切除した肺は病理診断(癌細胞を顕微鏡で見る検査)や増殖に関わる分子の検査などを行い、進行の具合により抗がん剤や放射線治療などの、追加治療を行います。
  呼吸器センター化に伴い呼吸器内科・放射線科ともより密な連携が可能となり、抗がん剤や放射線治療を手術前後に組み合わせた治療(集学的治療)、 更に採取した癌細胞から増殖に関わる遺伝子などを解析し、個人にあった分子標的薬(イレッサ,タルセバなど)による治療(オーダーメイド治療)も行っております。
また、呼吸機能に障害がある方(低肺機能患者)に対しては、術前からリハビリ科と共同で呼吸リハビリテーションを行っております。また臨床研究(国立病院機構肺がん研究グループ共同研究)として、栄養管理(アミノ酸製剤に漢方を組み合わせ)を加えた包括的呼吸リハビリテーションも行っております。その他、様々な合併疾患(循環器疾患・糖尿病など)をお持ちの方についても、各科の専門医と連携して診療を行います(総合病院の強みであり、またとても大切な事です)。低肺機能や合併疾患のために、根治手術などの手術機会をのがしてしまう方をなるべく減らしたいと考えております。

(関連論文)
Extended Operation for Non-small-cell Lung Cancer Invading into the Liver
Kazuhiro Sakamoto, Yasunobu Yamazaki, Takashi Suda, Ken Ide
Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 48: 464-467, 2000

(関連学会発表)
呼吸器外科領域の手術における皮膚表面接着剤Octyl-2-Cyanoacrylate(Dermabond)の有用性の検討
坂本和裕,正津晶子,土井卓子,関戸 仁,前原孝光,高梨吉則
第67回日本臨床外科学会総会(東京)2005.11.9-11

呼吸器外科手術の創閉鎖における皮膚表面接着剤Octyl-2-Cyanoacrylate(Dermabond)の有用性の検討
坂本和裕,正津晶子,山仲一輝,前原孝光
第23回日本呼吸器外科学会総会(東京)2006.5.25-27

肺全摘を行った高齢者pleomorphic carcinomaの1例
正津晶子,坂本和裕,椿原基史,松本 裕,新野 史
第144回日本肺癌学会関東部会(東京)2005.12.17

チタンメッシュによる胸壁再建を行った低肺機能進行肺癌の1例
正津晶子,坂本和裕,中山裕子
第139回日本胸部外科学会関東甲信越地方会(横浜)2006.9.2

呼吸器外科手術におけるBlake drainの有用性
山仲一輝,坂本和裕,椎野王久,土井卓子,関戸 仁
第69回日本臨床外科学会総会(横浜)ビデオシンポジウム2007.11.29-12.1

Composix hernia patch(r)により胸壁を再建した胸壁浸潤肺癌の1例
椎野王久,山仲一輝,坂本和裕
第145回日本胸部外科学会関東甲信越地方会(東京)2008.2.9

気管転移をきたした肺扁平上皮癌の1例
山仲一輝,坂本和裕,椎野王久,濱 雅文,山川 泰,椿原基史
第50回日本肺癌学会総会(東京)2009.11.12-13


●転移性肺腫瘍について

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移性肺腫瘍とは肺以外に発生した癌や肉腫などが血液やリンパ液の 流れに乗って肺に拡がったものです。 大腸癌・直腸癌などの消化器領域、骨肉腫・軟部肉腫などの整形外科領域、腎癌などの泌尿器科領域、卵巣癌・子宮頚癌などの婦人科領域などからの転移が多く、肺転移巣の切除により予後の改善につながります。
治療は抗がん剤などの化学療法が主体となりますが、原発巣(元の腫瘍のこと)の特性や肺転移の状況などを十分に検討した上で手術方法を考えます。
標準手術にこだわらず疾患の進行度と患者さんの体力を考慮して、拡大手術から縮小手術まで、安全でかつ治癒率の高い最適の手術を行っています。主に胸腔鏡を用いた手術を行っており、腫瘍の数や転移場所によってはハンドアシスト法(胸腔鏡に加えて、みぞおちに7~10cmの切開を入れ、そこから手を入れて腫瘍を触って確認しつつ切除する方法:HATS(hand-assisted thoracoscopic surgery))を行うこともあります。

(関連学会発表)

and Assisted Thoracoscopic Surgery (HATS) for Metastatic Lung Tumors
Kazuhiro Sakamoto, Yutaka Kumagiri, Haruhiko Ishii, Hiroyuki Ito, Kenji Inui, Naoki Ishiwa
10th World Conference on Lung Cancer, Vancouver, Canada, 2003.8.10-14

Kirshner鋼線と肩甲骨鈎を利用したHATS(hand-assisted thoracoscopic surgery)
坂本和裕,大森隆広,武井秀史,熊切 寛
第19回日本呼吸器外科学会総会 (長崎)2002.5.23-24

初回手術より39年経過後に肺転移で再発したエナメル上皮腫の1例
正津晶子,坂本和裕,禹 哲漢
第23回日本呼吸器外科学会総会(東京)2006.5.25-27

●気胸について

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気胸とは、肺の表面に穴が開き、肺が縮んでしまう疾患です。自然気胸がもっとも多く、そのほかに原因により外傷性、医原性の気胸などに分類されます。
これらのうちも最も多い自然気胸について詳しく説明します。

自然気胸についてのご説明

原因は?
肺の表面にできた嚢胞(のうほう:ブラやブレブともいいます)が破裂して胸腔内に空気が漏れてしまい、肺がしぼんだ状態のことを気胸といいます。肺から漏れた空気は胸の中(胸腔と言います)で逃げ場がないためどんどんたまってしまい、肺を押しやることで更に肺を縮めてしまいます。
好発年齢は20歳代ですが、50~60歳代で発症する方も増えております。20歳代の患者さんでは、やせていて背の高い男性に多いという特徴があります。ブラができる原因は詳しくは分かっておりませんが、身長の伸びと肺の発育の不均衡によるという説があります。30歳代以上の患者さんの多くはタバコを吸われており、喫煙が気胸の発生になんらかの影響を及ぼしてしているものと思われます。


どんな症状が出ますか?
突然の胸や肩、背中などの痛み、咳、呼吸困難(息が深く吸えない等)などの症状があります。肺の縮みが少ないときは一時的に息苦しくなっても,その後しばらくすると息苦しさがおさまってしまうこともあります。また発症時には痛みを伴いますが、時間がたつと痛みがなくなる方も多く、労作時の息切れだけが残ることもあります。空気漏れの部位が一方弁のようになり肺から漏れた空気がどんどん胸腔内に溜まって、胸腔内の圧が高くなりすぎることがあります。これを緊張性気胸といい、できるだけ早く治療を行わないと命にかかわることがあります。
また、肺が縮むだけではなく、出血を伴う場合があり(血気胸といいます)、出血量が多い場合は緊急手術が必要となります。


どんな治療をしますか?

まずは胸部レントゲンを撮った上で,初期治療として以下のことを行います。
1.肺の縮み方が少ない場合は特別な処置をせず、安静にすることで治ることもあります。週2~3回通院していただき、その間は自宅で安静にしていただきます。
2.肺の縮み方が中等度以上の場合、胸に管を入れて脱気を行います。
一般的には、胸腔ドレーンと呼ばれる管を胸に入れて脱気を行い、以後も漏れる空気を体外に逃がすために持続的に吸引する装置をドレーンに連結します(持続吸引療法)。
この場合は通常では入院が必要ですが....当科では下記のように外来治療も取り入れております。

自然気胸は、学生、働き盛りの方といった若い方に多く、できるかぎり入院せず治療を受けたい、入院期間を短く したいという希望が多くあります。そこで、当科では入院せずに安全に自然気胸の治療が行え、携帯可能な気胸の 治療装置を用いて自然気胸の外来治療を行っております。

※当科では、以前より自然気胸の外来治療を行っておりましたが、2005年から小型のソラシックエッグと呼ばれる携帯式ドレーンを使用しております。たまご型の箱の中に、胸の中の空気は外に出るが、外の空気は胸の中に入らない一方弁がついております。この仕組みによって胸の中の空気が外に出て肺が膨らむのを待ちます。空気漏れが止まり、肺が拡がったことを確認したら、ソラシックエッグを抜去して治療は終了です。その間は通院で治療を行います。入院が不要なので治療中でも通学、受験、通勤、デスクワークなどの軽作業が可能です。

ただし、ソラシックエッグを入れても肺の膨らみが不十分な場合は入院が必要になることもあります。


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〈当科におけるソラシックエッグ適応基準と自然気胸の治療方法〉
1.まず、ソラシックエッグによる治療ができない気胸があります。
① 緊張性気胸を起こしている方
② 血気胸を起こしている方
③ 肺気腫を合併されている方
④ お身体の様子を診て入院治療が適当と判断された方
このような患者さんは治療の安全上、ソラシックエッグは使用せず入院による治療を行っております。
2.ソラシックエッグによる治療が可能な方の治療方法(上記以外の方)
A) 自然気胸と診断されたことが初めての方
①外来でソラシックエッグ装着後、肺がしっかり拡がり、肺の空気漏れが治った方
⇒外来診察でソラシックエッグをはずし、治療終了となります。
   これまでの平均では外来での治療期間は1週間程度です。
②外来でソラシックエッグ装着後、肺の空気漏れが続く方(1週間が目安です)
⇒手術の前日まで通院で待機し、入院後手術(基本的に胸腔鏡手術)を 行います

B) 自然気胸と診断されたことがある方
①同じ側の自然気胸を2回以上起こされた方
⇒2回目以降は再発率が高くなるため、基本的に手術を行います。
  外来でソラシックエッグ装着後、入院日まで外来通院し、入院後手術(基本的に胸腔鏡手術)を行います。
     ②反対側の自然気胸を起こされたことがある方
⇒両側同時気胸を起こし生命に関わることがあるため、基本的に手術を行います。 
外来でソラシックエッグ装着後、入院日まで外来通院し、入院後手術(基本的に胸腔鏡手術)を行います。
いずれの方も手術日決定すれば基本的に前日の入院となります。それまでは外来にて治療 を行います。平均すると入院までは5日程度です。


ソラシックエッグによる治療効果についての調査結果:使用症例計70名(2010.6月まで)
1.入院期間の短縮
A) 外来通院のみで治療を終了された方:39名(2010.6月まで)
     B)ソラシックエッグによる初期治療後、手術を受けた方:31名(2010.6月まで)
       手術までの待機入院期間が短縮されました。
    両方あわせて入院期間短縮率は84.9%でした。
2.使用患者さんの年齢分布
    10代から20代の方を中心に若い方に使用しております。人数は少ないのですが50代以上の方にも安全に使用する
    ことができました。

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*当科坂本部長は1996年頃から約10年にわたり、ソラシックベント(携帯型気胸ドレナージキット)を使用して自然気胸の外来治療を行ってきました。2005年からより操作性に優れたソラシックエッグに変更して外来治療を継続しております.ソラシックエッグの利点は挿入がより簡単で、前胸部だけでなく脇の下など目立たない場所にも挿入できること、特にボトルに貯まった排液を(ご本人にも)簡単に捨てられることです。携帯型の場合ボトル内に排液がいっぱいに貯まると空気抜きを行う弁が正常に働かなくなる可能性があります。ボトルからの排液が簡単になり一層安全に外来治療が行えるようになりました。

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どんな場合に手術が必要ですか?

① ソラシックエッグや持続吸引療法を行っても空気漏れが止まらない場合
 (一週間くらい止まらない場合は手術をお勧めしています)
② 血気胸で出血量が多い場合(緊急手術になります)
③ 過去に反対側の肺も気胸を起こしている場合
 (まれではありますが、同時に両方の肺が縮んでしまうと呼吸が出来なくなり非常に危険です)
④ 再発の場合
 (初回治療として、保存的治療〈安静治療、ドレーン治療)を行った場合には
 脆弱な(破れやすい)ブラが残っているため,約半分の方に再発が起こります。
 2回目の気胸では保存的治療だけの場合には一旦治っても7割近くの方が再発します。)
⑤ 職業上必要な場合(パイロットなど)
  初発でも希望があれば手術いたします。

どんな場合に手術をするのですか?
胸腔鏡を使って2~3ヵ所の2cm程度の小さな傷で手術をしております。テレビモニターを見ながら嚢胞(ブラ)を見つけて切除します。当科ではブラの切り口に吸収性シートを貼り付け、切り口の補強をすることで再発予防措置を行っております。またブラがたくさんある場合にもすべてのブラを切除する事は難しいため、吸収性シートにて破れにくいように補強をします。自然気胸の胸腔鏡手術の再発率は補強処置などをしない場合には約10%前後とされておりますが、再発予防措置を行うことで再発率は約3%に抑えています。

手術の場合どれくらいの入院が必要ですか?

ソラシックエッグ(外来気胸セット)を挿入し外来通院可能な方は手術前日に入院していただきます。ただし月曜手術の場合など前日が休日の場合には金曜など休日前の入院となります。また合併疾患をお持ちの方では数日前の入院をお勧めする場合があります。手術後の入院期間は若い方だと平均2日程度です。高齢者や肺気腫(タバコなどにより肺がスカスカになっている疾患)を伴う場合には術後入院期間は少し長くなりますが、ほとんどの方は1週間以内には退院されております。
※手術を受けた方の入院期間は平均で5.5日、手術後の入院期間は平均3.1日でした。

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体力的に手術が難しい場合や、手術をしても再発してしまうような場合には、胸腔内に癒着剤を注入して肺と胸腔をくっつける方法(胸膜癒着療法)も行っております。

*BHD(Birt-Hogg-Dubé)症候群という遺伝性でブラが多発して気胸を起こす稀な疾患があります。
*女性の気胸の場合には、月経随伴性気胸(生理に関係しておこる気胸です)、肺リンパ脈管筋腫症(LAM)などの特殊な疾患が原因の事もあります。
これらの疾患は通常のブラ切除だけでは再発を繰り返すことが多いため、肺の広範囲に吸収性シートを貼り付けて補強する方法などの手術を行っております。

(関連論文)
Catamenial Pneumothorax Caused by Endometriosis in the Visceral Pleura
Kazuhiro Sakamoto, Takahiro Ohmori, Hidefumi Takei
Ann Thorac Surg 76: 290-291, 2003.

Staple Line Coverage with Absorbable Mesh after Thoracoscopic Bullectomy for Spontaneous Pneumothorax
Kazuhiro Sakamoto, Hidefumi Takei, Teppei Nishii, Takamitsu Maehara, Takahiro Ohmori, Michihiko Tajiri, Toshio Imada, Yoshinori Takanashi
Surg Endosc 18: 478-481, 2004.

Catamenial Pneumothorax Caused by Endometriosis in the Visceral Pleura
Kazuhiro Sakamoto, MD, Takahiro Ohmori, MD and Hidefumi Takei, MD
Respiratory Review 1: 16-17, 2004.

Autologous Salvaged Blood Transfusion in Spontaneous Hemopneumothorax
Kazuhiro Sakamoto, Takahiro Ohmori, Hidefumi Takei, Kimiatsu Hasuo, Yasushi Rino, Yoshinori Takanashi
Ann Thorac Surg 78: 705-707, 2004.

自然気胸再手術例の検討
坂本和裕,加瀬昌弘,富山  泉
気胸 1:150-153,1998.

自然気胸に対する胸腔鏡下手術後Staple-line周辺のブラ再発についての検討
坂本和裕,加瀬昌弘,孟 真,蔵田英志,永友 章,国兼浩嗣,岡本浩明,
渡辺古志郎,冨山  泉,佐藤秀之
胸部外科52:939-942,1999.

胸腔鏡下手術を施行した女性自然気胸症例の検討
坂本和裕,沖田将人,山形達史,熊切 寛,森川哲行,武内浩一郎,深田 睦,
小西敏雄
気胸 2:72-74,1999.

自然気胸術後入院期間短縮に向けて -手術終了直後胸腔ドレーン抜去の試み-
坂本和裕,土田知史,沖田将人,森川哲行,武内浩一郎
気胸3:88-91,2001.

自然気胸に対する外来治療 -Tru-Close Thoracic Ventの有用性についての検討-
坂本和裕,沖田将人,土田知史
日本呼吸器外科学会雑誌15:18-22,2001.

気胸をめぐる諸問題 術後肺瘻,再発防止における臓側胸膜補強の有用性
坂本和裕,土田知史
医薬の門41:467-468,2001.

簡易型気胸ドレナージキット(ソラシックベント)挿入後に再膨張性肺水腫を来した自然気胸の1例
坂本和裕,土田知史,大森隆広,武井秀史,森川哲行,武内浩一郎
日胸61:639-644,2002.

胸腔鏡下自然気胸手術のクリティカルパス
山仲一輝,前原孝光,石川善啓,藤井 慶太,西井鉄平,坂本和裕
日呼外会誌20:904-908,2006.

椎野王久,坂本和裕,山仲一輝,正津晶子
ソラシックエッグⓇによる自然気胸の外来治療の検討
日呼外会誌25:7-12,2011

(関連学会発表)
Wide Coverage of the Staple-line with Absorbable Mesh in Thoracoscopic Surgery for Spontaneous Pneumothorax
Kazuhiro Sakamoto, Takahiro Omori, Hidefumi Takei, Takamitsu Maehara
Congress of Endoscopic and Laparoscopic Surgeons of Asia 2002 (ELSA 2002), Tokyo, Japan, 2002.9.19-21
Oral presentation

Staple-line coverage with absorbable mesh after thoracoscopic bullectomy for spontaneous pneumothorax
Kazuhiro Sakamoto, Hidefumi Takei, Teppei Nishii, Takamitsu Maehara, Toshio Imada, Yasushi Rino, Yoshinori Takanashi
Society of American Gastrointestinal Endoscopic Surgeons (SAGES)
Los Angeles, USA ,2003.3.12-15
Poster of Distinction and Oral presentation

自然気胸術後入院期間短縮に向けて-手術終了直後胸腔ドレーン抜去の試み-
坂本和裕,土田知史,沖田将人,森川哲行,武内浩一郎
第4回日本気胸学会総会 (東京)2000.9.8-9

気胸をめぐる諸問題 術後肺瘻,再発防止における臓側胸膜補強の有用性
坂本和裕,土田知史
第2回横浜呼吸器外科研究会 (横浜)2001.2.17

自然気胸初発例におけるTru-Close Thoracic Ventの使用経験
坂本和裕,土田知史,沖田将人
第18回日本呼吸器外科学会総会 (東京)2001.5.10-11

自然気胸に対する簡易型気胸ドレナージキット(Tru-Close Thoracic Vent)の使用経験
坂本和裕,大森隆広,武井秀史,市野浩三,打越 暁,森本泰介,山里将也,森川哲行,武内浩一郎,三上理一郎
第41回日本呼吸器学会総会 (仙台)2002.4.4-6

自然気胸に対する胸腔鏡下手術におけるブラ切除断端広範被覆の有用性
坂本和裕,西井鉄平,武井秀史,前原孝光,大森隆広,田尻道彦,伊藤宏之,乾 健二,蓮尾公篤,利野 靖,高梨吉則
第103回日本外科学会定期学術集会(札幌)パネルディスカッション,2003.6.4-6

特発性血気胸における自己回収血輸血の経験
坂本和裕,禹 哲漢,石井治彦,伊藤宏之,乾 健二,蓮尾公篤,利野 靖,高梨吉則
第7回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会(札幌)2003.9.5-6

当院での肺リンパ脈管筋腫症合併気胸症例の経験
正津晶子,前原孝光 ,西井鉄平,坂本和裕
第10回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会,シンポジウム(難治性気胸(LAMを含めて)にどう対処するか)2006.9.9

自然気胸に対する外来治療 -ソラシックエッグの有用性について
山仲一輝,坂本和裕,椎野王久,正津晶子,山川 泰,椿原基史
第11回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会(東京)ワークショップ
2007.9.14-15

自然気胸に対する外来治療 -ソラシックエッグの有用性について-
椎野王久,山仲一輝,坂本和裕,土井卓子,関戸 仁,山川 泰,椿原基史
第61回国立病院総合医学会(名古屋)2007.11.16-17

自然気胸に対する外来治療―ソラシックエッグの有用性について
椎野王久,坂本和裕,山仲一輝,正津晶子
第25回日本呼吸器外科学会総会(宇都宮)2008.5.29-30

反復性気胸に対する胸腔鏡下手術を契機に診断されたBirt-Hogg-Dube症候群の1例
椎野王久,山仲一輝,坂本和裕,土井卓子,関戸仁
第70回日本臨床外科学会総会(東京)2008.11.28-29

臓側胸膜内に異所性子宮内膜組織を認めた月経随伴性気胸の1例
山仲一輝,坂本和裕,椎野王久
第26回日本呼吸器外科学会総会(北九州市)2009.5.14-15

自然気胸に対するソラシックエッグによる外来治療の検討
椎野王久,坂本和裕,山仲一輝
第13回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会(大阪)2009.9.11-12

反復性気胸に対する胸腔鏡下手術を契機に診断されたBirt-Hogg-Dubé症候群の1家系
椎野王久,山仲一輝,坂本和裕
第13回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会(大阪)2009.9.11-12

ソラシックエッグによる自然気胸外来治療の有用性の検討
椎野王久,坂本和裕,山仲一輝,濱雅文,山川泰,椿原基史
第33回日本呼吸器内視鏡学会総会(横浜)2010.6.9-10


●縦隔腫瘍

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縦隔腫瘍について
縦隔(じゅうかく)とは、左右の肺の間にもある厚い隔壁部のことです。心臓や大動脈、食道なども含まれておりますが、呼吸器外科ではこれら以外の胸腺や気管・気管支などの疾患の手術を行います。

どんな種類がありますか?

胸腺腫瘍(約40%)、奇形腫群腫瘍(胚細胞性腫瘍)(約17%)、神経原性腫瘍(約15%)、先天性嚢胞(約10%)、リンパ性腫瘍(約10%)が主なものです。
胸腺腫瘍は胸腺嚢胞、胸腺腫、胸腺癌、胸腺カルチノイドに分類され、奇形腫群腫瘍(胚細胞性腫瘍)は成熟奇形腫、精上皮腫、非精上皮腫(胎児性癌、絨毛上皮腫、奇形癌、卵黄嚢腫)に分類されます。
胸腺腫瘍については、下記の詳細をご覧ください。

どんな症状が出ますか?

多くの方は症状がなく胸部レントゲンや胸部CT検査などで見つかります。症状が出て来院される方は腫瘍のできる部位によっても異なりますが、主として周囲臓器の圧迫や浸潤による症状です。胸腺腫における重症筋無力症に関しては特殊なので別記します。

胸部不快感、胸部圧迫感 
上大静脈症候群 (顔がむくみます)
気管・気管支の狭窄による呼吸困難
胸水による呼吸困難
心タンポナーデ (胸が苦しくなり、血圧が低下します)
横隔神経麻痺 (呼吸困難となります)
反回神経麻痺 (声が枯れます)
etc.

どんな場合に手術が必要ですか?
縦隔腫瘍の治療や予後は組織型により異なりますが、悪性リンパ腫や胚細胞性腫瘍の一部以外の縦隔腫瘍は原則的に外科的切除術を行います。これは、腫瘍であれば良性であっても圧迫症状や、内容物の穿破や感染の危険性があるからです。

当科での手術のご説明
縦隔腫瘍に関しても可能な限り胸腔鏡を用いて手術を行っております。
腫瘍が大きかったり、進行しているような場合は、標準的な方法として、胸骨正中切開(胸骨という胸の真ん中にある骨を縦に切って縦隔を開いて手術)を行ったり、側方開胸(側胸部を切開して手術)を行います。腫瘍の種類によっては術後に抗がん剤を使った治療や放射線治療を追加します。
*当院では胸骨正中切開による手術において,胸骨の閉鎖にワイヤーは使用しておりません。生体吸収性の骨ピンと吸収糸にて閉鎖しておりますので術後のX線でワイヤーが写ることがありません。

(関連論文)
Sclerosing Hemangioma Isolated to the Mediastinum
Kazuhiro Sakamoto, Masato Okita, Hiroshi Kumagiri,
Shunji Kawamura , Koichiro Takeuchi,, Riichiro Mikami
Ann Thorac Surg 75: 1021-1023, 2003

心嚢内穿破をきたした縦隔内成熟奇形腫の1例
坂本和裕,加瀬昌弘,孟 真,蔵田英志
胸部外科53:74-77,2000.

嚢胞性縦隔腫瘍に対する胸腔鏡下手術
坂本和裕,加瀬昌弘,孟 真,蔵田英志,冨山  泉,佐藤秀之
日臨外会誌61:605-608,2000.

(関連学会発表)
肺尖部胸壁発生神経原性腫瘍に対する神経刺激装置併用胸腔鏡下手術
坂本和裕,土田知史,大森隆広,武井秀史
第63回日本臨床外科学会総会 (横浜)2001.10.10-12ビデオクリニック

右大動脈弓を伴う胸腺癌の一切除例
中山裕子,正津晶子,山仲一輝,坂本和裕,山川 泰,椿原基史,禹 哲漢
第47回日本肺癌学会総会(京都)2006.12.14-15

神経刺激装置併用し胸腔鏡下に切除した腕神経叢由来神経原性腫瘍の1例
坂本和裕,椎野王久,山仲一輝
第20回日本内視鏡外科学会総会(仙台)2007.11.19-21

急激な増大を示した前縦隔原発巨大脂肪肉腫の1切除例
山仲一輝,坂本和裕,椎野王久
第27回日本呼吸器外科学会総会(仙台)2010.5.13-14

●胸腺腫瘍

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胸腺腫瘍について
胸腺(きょうせん)とは、心臓の前~上、胸骨の裏のあたりに存在する、一見脂肪のように見える組織ですが、乳幼児のころには免疫をつかさどる重要な役割をしている組織です。子供の頃に発達していて、思春期以降はだんだん萎縮し特に重要な役割ははたさなくなります。
胸腺腫瘍とは、この胸腺にできる腫瘍のことで、胸腺腫、胸腺癌などがあります。胸腺腫には下に示します種々の病気が合併することがあります。ほかに胸腺カルチノイド、胸腺嚢胞、胸腺脂肪腫などがあります。胸腺腫瘍の中で胸腺腫が最も多い腫瘍です。進行すると周囲に浸潤したり、胸膜播種(腫瘍細胞が胸腔の中にこぼれてそこで発育した状態)を起こしたりします。術前に確定診断を付けることが難しい場所でもあり、この場所に充実性腫瘍(中身が詰まった腫瘍:対義語として嚢胞性腫瘍があります)が見つかった場合には早めの手術をお勧めしております。


胸腺腫に合併する疾患について
① 重症筋無力症:胸腺腫の20~25%に合併。力が入らなくなってしまう病気です。重症筋無力症では体内で抗アセチルコリン受容体抗体という物質が作られます。アセチルコリンは運動神経から筋肉への刺激伝達物質であり、この抗体により刺激の伝達が妨げられて筋力が低下してしまいます。
軽症だと、目のまぶたが下がってしまう程度ですが、重症になると呼吸筋麻痺により息ができなくなってしまいます。
重症筋無力症では胸腺腫がなくても全身症状がある場合は、胸腺をとる手術をすると症状が改善されるとされています。
② 赤芽球癆(せきがきゅうろう):胸腺腫の5%に合併。赤血球が少ししか作られず、貧血になってしまう病気です。反対に赤芽球癆の10%弱に胸腺腫が合併します。
③ その他 低ガンマグロブリン血症など。


当科での治療のご説明

当科では胸腺腫瘍が比較的小さい場合や、胸腺嚢胞の場合には胸腔鏡を用いて小さな傷での手術を行っております。
腫瘍が大きい場合や、周囲の組織への浸潤が疑われる場合には胸骨正中切開(前胸部を縦に切開し,胸のまん中にある骨を縦に切って行う手術)を行います。
当科では重症筋無力症に対する拡大胸腺全摘出術についても、希望があれば胸腔鏡(創が小さくてすみます)にて行っております。胸骨正中切開でも行っております。

(関連学会発表)
Experience of Thoracoscopic Extended Thymectomy: Comparison with Transsternal Approach
Kazuhiro Sakamoto, Yasufumi Hayashi, Hiroyuki Osawa, Hiroyuki Ito, Kenji Inui, Masakazu Kawamoto, Akio Ashida, Kimiatsu Hasuo, Yasushi Rino, Yoshinori Takanashi
Congress of Endoscopic and Laparoscopic Surgeons of Asia 2002 (ELSA 2002)
Tokyo, Japan 2002.9.19-21


●膿胸

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膿胸について
膿胸(のうきょう)とは、胸腔内に膿(うみ)がたまった状態です。肺炎や肺化膿症などが原因となります。発症後3ヶ月以内のものを急性膿胸,それ以降のものを慢性膿胸といいます。肺の手術後になることもありますが、これは治療法が異なります。高熱がでたり、息苦しくなったり胸が痛くなったりします。さらに進行すると全身に感染が広がります。

どんな治療をしますか?
抗生剤の投与と、膿の排出のために胸に管(ドレーン)を入れます。


どんな場合に手術が必要ですか?
管(ドレーン)を入れるだけでは膿が充分に排出できない場合も多く、この場合には手術を考えます。胸膜炎になると胸膜や肺の表面に新たに膜ができ、そのため肺が固くなり拡がらなくなります。この膜を剥がし、汚れたものを掻き出すとまた肺が膨らむようになります。この手術を剥皮術(はくひじゅつ)といいます。肺からの空気もれを伴い、なかなか治らない場合は、開窓術(かいそうじゅつ)を行うこともあります。
開窓術とは胸に大きく穴を開けて、中の膿を出す方法で、この手術のあとはその穴を毎日消毒してきれいにします。 感染が落ち着いたら、この穴を埋める手術をする場合もあります。穴を埋めるためには大網という胃にくっついた脂肪の膜のようなものを使ったり、筋肉の一部を使ったりします。また胸郭自体を肺にくっつける方法があり、それを胸郭成形術といいます。


当科での治療のご説明
剥皮術を胸腔鏡でも積極的に行っております。比較的早期の膿胸(急性膿胸)なら小さい傷を2~3ヶ所開ける胸腔鏡手術で治癒が可能です。 当科ではこれまでに約40例の急性膿胸に対して胸腔鏡下手術を行いました。肺膿瘍を合併していた方を除く,すべての方が改善し,再発(再燃)はしておりません。管(ドレーン)だけの治療と比べると,胸腔鏡下手術を行った方が病状の改善が早く、入院期間も短くて済むため、最近では急性膿胸につきましては早めの手術(胸腔鏡手術)をお勧めしております。当院での最近20例の急性膿胸手術では手術後のドレーン留置期間は平均9.8日,術後入院期間は平均14.5日と良好でした。

*膿胸によく似た疾患として頻度としては少ないですが,縦隔炎(降下性壊死性縦隔炎)があります.こちらは歯槽膿漏や咽頭炎などの炎症が頸部に拡がり更に縦隔(胸の中の心臓や大血管,気管・食道などがあるところ)に拡がるもので,膿胸を併発する事が多く,進行が急激で治療が遅れると致命的(死亡される方もいます)となります。当院でも2例経験しましたが、いずれの方もショック状態で運ばれてきました。2名とも緊急手術で救命できましたが、もう少し遅ければ.....
歯槽膿漏や耳鼻科領域の炎症がこじれ首のあたりが腫れて熱を持ち、呼吸が苦しくなる場合には縦隔炎の併発も考えて早めの専門病院への受診をお勧めいたします。

(関連論文)
急性膿胸に対する治療戦略 -胸腔鏡手術と術後抗生剤短期投与の検討-
椎野王久,坂本和裕,山仲一輝,正津晶子,濱 雅文,山川 泰,椿原基史
気管支学33:236-240,2011.

(関連学会発表)

扁桃炎より進展した降下性壊死性縦隔炎に対し胸腔鏡下縦隔ドレナージ術を施行し救命し得た1例
椎野王久,山仲一輝,一万田充洋,坂本和裕,山川 泰,椿原基史
第121回日本呼吸器内視鏡学会関東支部会(東京)2007.7.7

急性膿胸に対する胸腔鏡下手術例の検討
椎野王久,坂本和裕,山仲一輝
第27回日本呼吸器外科学会総会(仙台)2010.5.13-14

急性膿胸に対する胸腔鏡下手術例および術後抗生剤投与期間についての検討
-術後抗生剤の長期投与は必要か-
椎野王久,山仲一輝,正津晶子,坂本和裕
第63回日本胸部外科学会定期学術集会(大阪)2010.10.24-27


結核性膿胸について
当院では結核病棟がないため、結核菌が原因の場合は他の専門病院を紹介しております。


●手掌多汗症

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手掌多汗症について
名前のとおり、手のひらに汗を沢山かく病気です。気になる方は一度ご相談ください。

どんな手術をするんですか?
交感神経幹という神経の束が胸の中を脊椎に沿って走っています。この交感神経幹(および交感神経節)の一部を焼く、または切除する手術を行います。交感神経は緊張したときなどに働く自律神経であり、この機能が亢進すると手掌多汗症になります。当科では3mm程の傷2ヶ所で、細い胸腔鏡を用いて手術を行っています。わきの下の小さな傷のため目立ちません。この手術を行うと、反対側の手の発汗が代償的に多くなります(代償性発汗)。また両側に行った場合は背中や足に代償性発汗をおこします。 手術を行った側の手にはほとんど汗をかかなくなり,冬場は乾燥してひび割れを起こしやすくなるため,保湿クリームをお勧めします.手術を希望される方は代償性発汗について充分にご理解された上で、まずは片方だけの手術をお勧めしております。


術後合併症について
術後合併症を起こすことは非常に少ないですが、学会・論文などでは下記の合併症が報告されています。

感染 ・出血・肺炎・背部痛・皮膚知覚違和感・胸水・気胸・ホルネル症候群(まぶたが下がる、縮瞳などの症状が出現します。 頭側の神経幹が障害されるとホルネル症候群になることがあります。) など


●漏斗胸

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漏斗胸(ろうときょう)ってなあに?
写真(左)のように胸の中央にくぼみがある病気です。このくぼみは、手術で直すことができます。

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どんな場合に手術が必要ですか?

主に見た目を良くするために手術を行います。術前は特に何も感じていなくても、術後に胸痛や呼吸困難感がよくなったと感じる方もいるようです。また、胸郭の変形が大きいと心臓や肺が圧迫されて心機能や呼吸機能の異常が出てくることもあります。心臓超音波検査(エコー検査)で15%程の方に心臓の弁に異常(僧帽弁逸脱症)を認めたとの報告もあります。
手術の時期は、自分の胸の形が他人と違う事に気付き始める時期の小学生くらいからをお勧めしております。変形が強い子供さんの場合には時に精神的発育に影響を及ぼすことがありますので、早めのご相談下さい。


ナス法に関しては大人になると軟骨が固くなってくるため、中学生くらいまでに手術されるのが良いとされていますが、成人でもバーを2本挿入することでかなり改善します。 実際に当院で手術をされた47名のうち半数以上の24名が高校生以上の方でした。


従来法(Ravitch(ラビッチ)法、胸骨翻転法)との違い

以前の漏斗胸の手術は、胸の正面に大きな傷跡を残し、何本もの肋軟骨を切らなければならず,手術時間もかなりかかっておりました.

ナス法の特徴として
胸腔鏡を用いて行います。また、バーが変位(移動)しないような工夫(3点固定法)を行っています。
バーの固定は吸収糸(数ヶ月で自然に吸収されてなくなる糸)を用いております.
胸の正面に大きな傷跡はできません。
(傷跡は左右脇の下に2cm程度と胸腔鏡を入れる傷1cm程度)
従来の手術法より手術時間は大幅に短縮され、出血量も少量です。
手術後の入院期間は年齢によっても差がありますが、1週間程度です。
当院では医療用皮膚接着剤を使用しているため手術後の抜糸はありません。
また、一ヵ月程度で日常の生活に戻ることができます。このバーは特に問題がなければ2~3年後に手術をして抜去します。抜去手術後は3~5日程度で退院が可能です。

陥凹が強い漏斗胸につきましても対応しております。お気軽にご相談下さい。

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*挿入する金属バーは長期間体内に留置する必要があります。従来からのものはステンレス製(鉄・ニッケル・クロム・モリブデン・マンガンなどの合金)で,最近になりニッケルの溶出による毒性が問題となっております。当院では2006年7月以降はすべてのバーをチタン合金製金属プレートに変更しております。

*漏斗胸手術は17歳以下のお子さんでは自立支援医療(旧:育成医療)の申請により医療費の一部が補助される場合があります。詳しくは来院時にご相談下さい。

(関連学会発表・講演)
漏斗胸手術(Nuss法)の合併症対策 金属バー胸骨固定法の工夫
高橋 航,坂本和裕,大沢宏至,林 康史,伊藤宏之,乾 健二,稲葉将陽,利野 靖,高梨吉則,横森欣司
第20回日本呼吸器外科学会総会(東京),2003.5.9 

漏斗胸に対する胸腔鏡併用胸骨挙上術(Nuss法)
坂本和裕
第6回横浜低侵襲手術研究会(横浜)2008.9.11 講演

高度陥凹を伴う漏斗胸に対するNuss法手術とその問題点
坂本和裕,椎野王久,正津晶子,益田宗孝
第28回日本呼吸器外科学会総会(別府市)2011.5.12-13(要望ビデオ)

高度陥凹漏斗胸Nuss法手術後の前胸部膨隆(Bulging) -その原因および予防と対処法-
坂本和裕,石川善啓,正津晶子,李 相憲
第11回Nuss法漏斗胸手術手技研究会(東京)2011.6.11

手術を希望されない方に
バキュームベル(Vacuum Bell)も取り扱っております。バキュームベルは前胸部の凹みに大きな吸盤をあてて吸引することで胸骨を持ち上げる器具です.毎日20~30分程度使用することで、徐々に陥凹が目立たなくなります。手術(Nuss法)ほどの効果は期待できませんが、身体に傷を付けずに行える漏斗胸の治療として優れています。 バキュームベルは保険適応外のため、自費(約11万円)での購入となります。

胸膜中皮腫

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胸膜中皮腫について
アスベスト(石綿)が影響する悪性腫瘍として、有名になった疾患です。胸膜という肺の表面や胸郭の内側の壁を覆う胸膜という膜から出来る悪性腫瘍です。当科では胸膜中皮腫の診断目的で胸腔鏡を用いた生検術を行っております。病変が限局性である場合は胸膜肺全摘を含めた根治的手術が可能です。

当科での治療のご説明

アスベスト(石綿)に関連する腫瘍の一つである胸膜中皮種につきましても手術適応があれば、積極的に胸膜肺全摘術を行っております。アスベストにより起こる良性胸膜肥厚との鑑別が難しい場合もあり、超音波やCTガイドによる胸膜生検を含め、胸腔鏡による胸膜生検も積極的に行っております。 また新しい抗がん剤(アムリタ)や放射線治療も併用した総合的治療も行っております。
(関連論文)
Membranous Glomerulonephritis Associated with Diffuse Malignant Pleural Mesothelioma
Kazuhiro Sakamoto, Hiroharu Suzuki, Takao Jojima
Surgery Today 30: 1124-1126, 2000.
(関連学会発表)
肺スリガラス陰影の経過観察中に発見された胸膜中皮腫の1例
山仲一輝,一万田充洋,中山裕子,正津晶子,坂本和裕,山川 泰,椿原基史
第147回日本肺癌学会関東部会(東京)2006.12.2

胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘・骨性胸郭合併切除後の胸壁再建 -チタンメッシュプレートの使用経験-
坂本和裕,山仲一輝,椎野王久,山川 泰,椿原基史
第48回日本肺癌学会総会(名古屋)2007.11.8-9 

胸膜中皮腫に対するアリムタ使用2例の経験-胸膜肺全摘術後および高齢者非手術症例への使用-
山仲一輝,坂本和裕,椎野王久,山川 泰,椿原基史
第6回日本臨床腫瘍学会学術集会(福岡)2008.3.20-21


診療日時

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外来日は毎週火曜,木曜の午前・午後と金曜日の午前中です。
再来は原則的には予約制ですが、予約外の診察もいたします。また他の日時の受診でも呼吸器外科外来に連絡いただければ、救急科・呼吸器内科と連携し対応いたします。
また、夜間休日緊急の場合は救命救急センターとも連携し対応しております。

横浜医療センター電話番号:045-851-2621(代表)

主な医療設備

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33次元CT、64列MDCT、MRI(核磁気共鳴画像)、各種シンチグラム(放射性同位元素を用いた検査:核医学(RI)検査装置シーメンス社製Symbia S))などの最新画像診断装置。リニアック(放射線照射医療装置)。フレキシブル気管支鏡(電子スコープ、ポータブル気管支鏡)。ハイビジョンビデオ胸腔鏡システム、超音波凝固切開装置(超音波メス)、エナジーデバイス(エナジーベッセルシーリングシステム)などの最新の手術用機器を備えています。 また、ゆうあいクリニックPETセンターと提携しPET検査も行っております。 

診療実績



 2007.1月~2011.10月   
     呼吸器外科手術
合計: 622例 (その内,胸腔鏡手術:511例(82.2%))
原発性肺癌:  182例
  腺癌:     103例
  扁平上皮癌:  54例
  大細胞癌: 2例
  小細胞癌: 7例
  腺扁平上皮癌:3例
  その他: 13例
転移性肺癌: 49例
良性肺腫瘍: 14例
胸膜中皮腫: 8例
胸壁腫瘍: 15例
縦隔腫瘍: 46例
炎症性肺疾患: 32例
膿胸・縦隔炎: 48例
気胸・嚢胞性肺疾患:148例
漏斗胸: 36例
胸部外傷: 6例
その他: 38例

研修情報

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現在,専修医(後期臨床研修医,呼吸器外科3年コース)を募集しております。
*日本外科学会専門医を取得に必要な消化器・一般外科、心臓血管外科の手術も研修できるように配慮しております。
詳しくは横浜医療センター電話番号:045-851-2621(代表):呼吸器外科 坂本まで
*当院は外科系専門医制度と連携したデータベース事業「NCD:National Clinical Database」の参加病院です。

当院呼吸器外科専修医手術経験数(3年間)


横浜医療センター専修医(後期臨床研修医)募集のご案内
http://www.yokohama-mc.jp/research/kenshuui.html
横浜医療センター後期研修プログラム(PDFファイル)

スタッフ紹介

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役 職
氏  名
専 門 分 野
認定医・専門医
部 長
さかもと かずひろ
坂本 和裕
呼吸器外科全般
(肺癌・気胸・縦隔腫瘍・膿胸・漏斗胸など)
胸腔鏡下手術
医学博士
日本外科学会 専門医・指導医
日本呼吸器外科学会 専門医・指導医・評議員
日本胸部外科学会 指導医
日本呼吸器内視鏡学会 指導医・評議員
日本臨床外科学会 評議員
日本気胸・嚢胞性肺疾患学会 評議員
日本肺癌学会 評議員
日本内視鏡外科学会 評議員
日本がん治療認定機構 がん治療認定医・暫定教育医
日本臨床腫瘍学会 暫定指導医
日本医学放射線学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本消化器外科学会 認定医
米国腫瘍学会会員
世界肺癌学会会員
医 師
いしかわ よしひろ
石川 善啓
呼吸器外科全般
一般外科
日本外科学会認定医、専門医
日本呼吸器外科 専門医
日本胸部外科学会
日本肺癌学会
日本消化器外科学会
日本呼吸器内視鏡学会
日本臨床細胞学会
医 師
い さんほん
李 相憲
一般外科
日本外科学会
日本胸部外科学会
日本呼吸器外科
日本呼吸器内視鏡学会
日本臨床外科学会
日本心臓血管外科学会
BLSプロバイダー
ACLSプロバイダー



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